そう思って、資産形成を始める人は少なくありません。
投資をして、生活費を下げて、できるだけ早く仕事を辞める。
FIREという言葉を知った頃の私は、それが自由になるための一つの方法なのだと思っていました。
でも、年齢を重ね、仕事や家族、これからの暮らしについて考えるようになると、少し違う形の自由もあるのではないかと思うようになりました。
それは、
「仕事を完全に辞めるのではなく、働く量を自分で決められる暮らし」
です。
この記事では、そんな働き方を「ゆとりFIRE」と呼んでみたいと思います。
FIRE=仕事を辞めること、ではない
FIREは「Financial Independence, Retire Early」の略。
経済的自立を達成し、早期リタイアする考え方です。
一般的には、投資によって十分な資産を作り、資産から得られる収入で生活費をまかなうことを目指します。
もちろん、それは魅力的な選択肢です。
毎朝決まった時間に起きて仕事へ行かなくてもいい。
働くかどうかを、自分で決められる。
でも、私は「仕事を辞めること」だけが自由なのではないと思うようになりました。
仕事そのものが嫌いなわけではないからです。
人と話すこと。
誰かの役に立つこと。
自分の経験や知識を使うこと。
そうしたことには、収入とは別の価値があります。
だからこそ、
「辞めるために資産を作る」のではなく、「働き方を選べるように資産を作る」
という考え方に惹かれるようになりました。
「もっと働く」以外の選択肢を持つ
40代、50代になると、働き方について考えるきっかけが増えてきます。
体力の変化。
親のこと。
子どもの独立。
自分自身のこれから。
そして、若い頃と同じように「収入を増やすことだけ」を優先することが、本当に自分にとって一番いいのかと考えるようになります。
たとえば、月に20日働いている人がいたとします。
それを15日、12日、10日と少しずつ減らしていく。
収入は減ります。
でも、その分だけ自由な日が増えます。
月に5日減れば、年間では60日。
約2か月分の「働かなくてもいい日」が増えることになります。
もちろん、単純に勤務日数を減らせばいいわけではありません。
生活費、社会保険、年金、税金、投資額などを一緒に考える必要があります。
でも、資産形成が進んでいれば、
「収入を最大化するために働く」から「必要な分だけ働く」
へ、少しずつ移行することができます。
これが、私が考える「ゆとりFIRE」の出発点です。
Coast FIREという考え方
FIREの中には「Coast FIRE」という考え方があります。
すでにある程度の資産を築き、そこから先は資産の成長を待ちながら、生活費を仕事でまかなっていくスタイルです。
つまり、
「もう必死に資産を増やさなくても、将来必要な資産に届く可能性が高い」
という状態。
完全に仕事を辞めるわけではありません。
むしろ、仕事を続けながら「資産形成のために働く」というプレッシャーを減らしていきます。
私は、この考え方が50代以降の暮らしにとても合っていると思っています。
たとえば、
40代後半
→ 資産形成を優先する
50代前半
→ 働きながら資産を育てる
50代半ば
→ 資産の成長を確認する
50代後半
→ 働く日数を少しずつ減らす
60代
→ 年金や資産を組み合わせながら、さらに自由度を上げる
そんな流れです。
ゆとりFIREは「何歳で辞めるか」を決めない
FIREを考えるとき、
「50歳で辞める」
「55歳で辞める」
「60歳で辞める」
といった年齢目標を設定することがあります。
でも、ゆとりFIREでは、少し違います。
目標にするのは、
「何歳で辞めるか」ではなく、「何日働けば十分なのか」
です。
たとえば、
月17日働かないと不安だった状態から、
月15日で大丈夫。
↓
月12日でも大丈夫。
↓
月10日でも大丈夫。
というように、少しずつ「必要な労働量」を下げていきます。
これは、いきなりFIREするよりも心理的なハードルが低い方法です。
そして、仕事を減らしたことで生まれた時間を、
旅行に使う。
家族と過ごす。
親との時間に使う。
趣味を楽しむ。
何もしない。
そんなふうに、自分のために使っていきます。
資産は「老後のため」だけではない
資産形成をしていると、つい「もっと増やさなければ」と考えてしまいます。
投資額を増やす。
節約する。
収入を増やす。
運用利回りを気にする。
もちろん、これらは大切です。
でも、資産形成の目的は、資産額そのものではありません。
自分がどう暮らしたいかを選べるようにすること。
それも、資産の大切な役割だと思っています。
100万円の資産があれば、突然仕事を辞められるわけではないかもしれません。
でも、100万円があることで「少し休む」という選択肢が生まれることがあります。
1,000万円あれば、働き方を変える選択肢がさらに増えるかもしれません。
そして、十分な資産と安定した収入が組み合わさったとき、
「嫌な仕事を続けなければならない」という状態から抜け出す力
になります。
だから私は、資産形成を「早くFIREするための競争」として考えないようにしたいと思っています。
社会保険も「ゆとり」の一部
50代以降の働き方を考えるなら、収入だけでなく社会保険も重要です。
健康保険。
厚生年金。
雇用保険。
特に厚生年金は、働いている間の報酬に応じて将来の年金額にも関係します。
そのため、
「仕事を減らす=すぐに仕事を辞める」
と考える必要はありません。
社会保険に加入できる働き方を維持しながら、勤務日数や時間を減らす。
そんな選択肢もあります。
社会保険の適用範囲は今後も拡大する方向にあります。
だからこそ、これからの50代は、
「どれだけ働くか」だけでなく「どのくらいの働き方なら社会保険を維持できるか」
も含めて考えていきたいと思っています。
※社会保険の加入条件は勤務先や契約内容などによって異なるため、実際に勤務日数を減らす場合は勤務先や公的機関で確認することが大切です。
ゆとりFIREに必要なのは「完璧な資産」ではない
「資産が5,000万円ないとFIREできない」
「配当金が月20万円必要」
そんな情報を見ると、FIREは自分には無理だと思ってしまうかもしれません。
でも、本当に必要なのは「FIREできるほどのお金」ではなく、
自分の生活費と働き方に合った資産額
です。
生活費が月30万円の人と、月15万円の人では必要な資産は違います。
仕事を完全に辞める人と、月10日働く人でも必要な資産は違います。
年金を65歳から受け取る人と、繰り下げる人でも違います。
だから、
「FIREするなら○万円」
と一つの数字だけで考える必要はありません。
私が目指したい「ゆとりFIRE」
私が考えるゆとりFIREは、
仕事を捨てることではありません。
お金のためだけに働かなくてもいい状態を作り、
自分が好きな仕事や、人とのつながりを残しながら、
働く量を少しずつ減らしていく。
そんな暮らしです。
40代では、まだ資産を育てる。
50代前半では、働きながらCoast FIREを目指す。
50代半ばから、少しずつ仕事を減らす。
60代では、資産・仕事・年金を組み合わせる。
そして、空いた時間を人生に戻していく。
これなら、FIREを目指す過程そのものも楽しめる気がします。
「辞める」より「選べる」を目指す
FIREという言葉を知ると、
「いつ仕事を辞められるだろう」
と考えてしまいます。
でも、本当に欲しいのは「退職」というイベントではなく、
自分で時間の使い方を決められる生活なのかもしれません。
月20日働いていた人が、月12日になり、月10日になる。
それだけでも、人生の自由度は大きく変わります。
資産が育てば、さらに選択肢が増えます。
仕事を続けてもいい。
減らしてもいい。
少し休んでもいい。
旅行に行ってもいい。
そんなふうに、「どうするか」を自分で選べる状態。
私は、それを「ゆとりFIRE」と呼びたいと思います。
早くリタイアすることだけが、自由ではない。
働きすぎない。
使いすぎない。
我慢しすぎない。
そして、これからの人生に「ゆとり」を残す。
そんなFIREの形があってもいいと思っています。









